25周年対談『泉館長×ターザン山本』第7話(最終回)『闘道館という場所』

25周年対談『泉館長×ターザン山本』第7話(最終回)『闘道館という場所』

第7話(最終回)

闘道館という場所

——プロレス&格闘技こそ地上最強の文化である


25周年対談『泉館長×ターザン山本』 目次

第1話 5年ぶりの対談

第2話 コロナ禍、豊嶋裕司さんと「ウイルスマスク」

第3話 「世界のプロレス」と「ベトナム武道」

第4話 アメリカ

第5話 猪木さんの死去、そして猪木展

第6話 鑑定団鑑定士

第7話(最終回) 闘道館という場所

※20周年対談はこちら


モノを売ること、言葉を残すこと

泉館長:
闘道館というリアル店舗の存在理由を考えた時、一番のメインは、モノの買取・展示・販売です。

そしてもう一つは、生の人間と触れ合うLIVEイベントです。

モノを扱う店でありながら、ライブで生の言葉を聞ける場所でもある。

先生のような発信力のある方に語ってもらう。
レスラー本人が語る。
関係者が語る。
ファンがその場にいて、同じ空気を吸う。

そこに、闘道館という場所の意味があると思っています。

ターザン山本:
トークライブは大きいよね。

闘道館は色んな種類のイベントをやってるよね。
有名選手からお笑いプロレスまで。
マニアックだよ。

毎週何本もやって、年間で100本以上?
定着している。

泉館長:
そうですね。

先生に最初の年から毎週のようにやっていただいたことの積み重ねが、今につながっていると思います。

闘道館のイベント文化の原点には、ターザン山本トークショー、あるいは一揆塾の精神。
それは間違いなくあります。

巣鴨に移転した時、このイベントスペースはどうしても作りたかったんです。

今ここは、最大で85席くらい椅子を並べられます。

大きい会場ではありません。
でもその分、全部がリングサイドみたいな距離。

レスラーが目の前にいる。
声の熱が、息づかいまでそのままダイレクトに伝わる。

売上だけを考えれば、このスペースでもっと数字を上げる使い方はできます。
でも、闘道館にとってこのLIVE空間は必要だと思ったんです。

ターザン山本:
全部がリングサイドみたいな感じ。
それがいいんだよ。

闘道館では、レスラーや関係者が生の言葉を語るLIVEイベントが
年間を通して開催されている。

記憶が回転する場所

泉館長:
プロレスという分野は、本当にいろんな切り口があります。

レスラー、団体、歴史、あの試合、テーマ曲、マスク、ベルト、パンフレット、雑誌、ポスター、フィギュア。

一つの出来事でも、人によって記憶の切り口が違う。

だから同じような題材のトークショーをやっても、先生のトークショーと、ゴングの清水さん、ドクトル・ルチャ主催会では、切り口が全然違うんです。

ターザン山本:
この分野は、多様性と思い込み、思い入れがあるんですよ。

記憶にフィットしている。
記憶が生きているわけですよ。

トークショーっていうのは、記憶を主体にしながら回転するんだよね。

泉館長:
そうですね。

あの時の記憶を、別の角度から検証する。
レスラーの個人史を振り返ってもらう。
団体の栄枯盛衰を検証する。
テーマ曲ならテーマ曲。
マスクならマスク。
雑誌なら雑誌。

そういう記憶の切り口が無限にある。

そして最後に2ショットを撮る。
同じ時間を共有した記念として、ファンは新たな記憶を刻み込んでいく。

後で見返した時に、

「あの時、この話を聞いたな」
「あの空間にいたな」

という記憶のスイッチになる。

本当に残るのは、写真だけではなくて、その場の空気なんですよね。

また一揆塾のような、先生の世界観や感性を深掘りする講座もぜひやっていただきたいです。

ターザン山本:
やりましょう。

今、私はかつてないほど絶好調。
脳が冴え渡っているというか、アウトプットしたいこと、伝えたいことが出まくっていますから。

2ショットは選手との共有体験

50万件のデータを引っ越す

泉館長:
この5年で大きかったこと、もう一つ。
スタッフとシステムのことがあります。

20周年の時に、これから海外向けにシステムを変えなきゃいけないという話をしていたと思うんですが、それを実行しました。

闘道館のシステムは、十何年か使っているうちに、どうしても古くなっていました。

ただ、簡単には変えられないんです。

まずデータベースが、50万件くらいあるんですよ。

50万件のデータ、それに紐づく画像が数百万枚。
それを全部、秩序立てて移行する。

普通のシステムでは簡単にはできない。
相当お金もかかるし、担当のスタッフには通常と違う大きな負担がかかる。

ターザン山本:
AIを活用すればどうなんですか?

泉館長:
今後AIをより活用するためにも、まずベースとなる蓄積データを、どう使える形で移行できるか。
そこをシステム的にどうにかしないといけなかったんです。

データベースとWEBサイト、お店の在庫を一元管理するには、レジシステムにも組み込んでカスタマイズできないとダメ。

一昨年、いよいよやらないとダメだということで、30社くらい検討しました。

選んで、選んで、最後に3社、4社くらいまで絞って。
WEBミーティングをして、スタッフの中村と私で、

「ここにお願いするしかない」

と決めました。

金額も、まずシステムの引越しだけで、POSとWEBを連動させるために一千万円をはるかに超える金額をドーンと使いました。

リアル店舗の移転じゃないですよ。
WEBのシステムを移すだけで、これだけかかった。

でも、やりたいことを持続させようとしたら、安いのか高いのかよく分かりませんでしたが、それくらいはかけなきゃ前に進めなかった。

毎週WEBミーティングで進捗を確認しながら、中村は半年ほどほとんど休みなくこのプロジェクトにかかりっきりで対応してもらった。

それくらいかけても、うまくいかないこと、できないことはいっぱいありました。
移行後も不具合はたくさんありました。
前より不便になった部分、使いにくくなった部分も正直あります。

それでも、なんとか去年の3月にリニューアルして、海外のお客さんとの距離はグッと縮まった。

新しい海外のお客さんからの注文も一気に増えました。

そこは一つ、山を越えたなと思っています。

ターザン山本:
縮まった。

だって今はネットがあるからさ。
もう国境なんてないわけですよ。

南アフリカであろうと、オーストラリアであろうと、グリーンランドであろうと、届くんですよ。

そこは最大限利用しないと。

泉館長:
本当にそうですね。

昔はイメージでしかなかったことが、今はリアルにそうなっています。


国境がなくなった時代の難しさ

泉館長:
なんとかリニューアルのバタバタも数ヶ月で落ち着いて、よし、これで軌道に乗ってきたと思ったら、今度はトランプ関税が出てきました。

アメリカは、うちにとって最大の海外マーケットです。

そこに15%の関税がかかる。

15%だけならまだいいんです。
でもゼロだったものが15%になることで、1回の取引につき3000円くらいの手数料が取られるようになってしまった。

さらに最近は送料もどんどん値上がりしていて、これはかなりハードルが高くなってしまった。

それまで細かく注文してくれていたアメリカのお客さんが、一時的にかなり減りました。

でも、それでも逆風に耐えて、できることを一つ一つ改善していく。
最近はアメリカも少し戻ってきて、海外全体としては伸びています。

こういうことも含めて、コロナの時と同じで、もがきながら前に進んでいくしかない。

ターザン山本:
ネット社会は、ものすごく動きが激しいんですよ。

廃れていくものもすぐ廃れるし、繁栄したものも終わる。

そういうことにいかに敏感に対処しながら変わっていかなきゃいけない。
非常に難しいビジネスだよね。

三年続いたら奇跡みたいな時代じゃないですか。
一年続いたら奇跡みたいな時代なんですよ。

泉館長:
本当に難しいです。

勢いに乗ることはできても、乗ったからといって続くとは限らない。
でも逆にいうと、しばらく工夫しながら耐えていたら、また風向きが変わることもある。

だからこそ、変わり続けないといけないんだと思います。

ただ、闘道館は幸運にも25年連続で前年比の売上を超えて、必ず成長してきました。

私の中では、毎年、前年の数字が対戦相手のつもりなんです。

前年の自分に勝てなかったら、負け。
そう思って、何か改善できることはないか、前に進めないかを繰り返してきました。

去年と同じことをしていたら、それは停滞であり、すぐに衰退につながる。

一回だけ、危なかった年があったんですが、最終的にギリギリ前年比を超えたという年はありました。
でも基本的にはずっと前年を明確に上回る。

それがまだできているということは、最初がどれだけ小さかったのかという裏返しかもしれませんが(笑)。

また大企業から比べたら、何をその規模でと笑われてしまうかもしれません。

でも、他は関係ない。
自分が去年より毎日、稽古して強くなったのかどうかが問題です。

成長の仕方って色々あると思うんです。

人間も17才くらいまでは放っておいても背が伸びて体が大きくなります。
当然、戦闘能力も高くなりますが、格闘技の世界では身体の成長が止まった17才からが本当に強くなる。

25才はまさに全盛期に入った頃です。

ここから5年、10年が全盛期だと思って、もう少し先に進んでみたいですね。


マイケルが理解できなかった闘道館

泉館長:
アメリカでレッスルコンを主催しているHighspotsという会社があります。

サイン会で選手にたくさんサインしてもらい、それに証明書をつけてポートレートとして販売する。
そういうビジネスを大きくやっている会社です。

レッスルコンに2回行ったり、そのイギリス支社のアントニーが日本に来たりして、だんだん関係ができていきました。

アントニーはいきなり飛び込みで闘道館に来て、

「タイガーマスク、佐山聡に会わせてくれ」

とカウンターでお願いされました(笑)。

いやいや、うちは佐山さんの窓口じゃないよ、というところから関係が始まりました。

でもやり取りをしているうちに仲良くなって、今年の正月には、その大ボスというか、社長のマイケルが日本に来たんです。

せっかく日本に来たので、私が車を出して富士山へ連れて行ったりしました。

その富士山の麓の温泉で、サウナに入りながらいろいろ話したんです。
裸の国際交流です(笑)。

富士山を前に、Highspots社のマイケルと。

そこで彼から言われたのが、

「闘道館のことが、どうしても理解できない」

ということでした。

何回説明を聞いても理解できない、と。

「なぜ、そんな非効率なことをしているんだ」と(苦笑)。

一個一個バラバラの商品を扱って、値段も違うし、状態も違う。
フィギュアもあれば、マスクもある。
雑誌もある。

それをお客さんから買い取る意味が分からない。

人気選手と直接つながって、選手にサインしてもらえば、確実な本物の商品を大量に作れる。
それを売ればいいじゃないか。

なんでそんな面倒なことをしているんだ、というわけです。

私は一生懸命、格闘文化の継承とか、古物を扱う面白さとか、人との出会いとか、これまでの歴史とか、そういう話をするんですけど、

「うーん」

と首をかしげられる。

「せめて高額商品だけを扱うとか、商材を絞るとか、なんでも扱っていたら効率が良いようには見えない」

と。

でも、それが逆に新鮮でした。

アメリカ人、少なくともマイケルのようなビジネスの人から見たら、闘道館は無駄が多くて理解不能なんだと。

でも同時に、こうも思いました。

確かにとても非効率なことをしているのかもしれない。
だけどこれは、良いようにとらえれば、利益追求の企業からすると参入障壁になっているのかもしれない。

ターザン山本:
日本人の精神文化って、いろいろあるじゃないですか。

あれって完全に不合理なんですよ。

でも、それが実は観光客に一番受けているんですよ。
間違ってないんですよ。

その方が一般化しないじゃないですか。
オリジナルじゃないですか。
全く真似できない。

少ない。
小さい。

でも、そこに日本文化の特徴があるんです。

向こうは大量生産で、効率を考えるじゃないですか。

泉館長:
そこは面白いなと思いました。

大量に同じものを作って売る経済の合理性。
一方で、闘道館は一点一点の来歴や記憶を見ながら扱う。

効率は悪いかもしれない。

でも、その非効率の中に価値がある。
これは闘道館の強みでもあるのかなと思いました。


スタッフを専門職にする

泉館長:
その面倒な仕事を成立させ続けるためには、スタッフの力が必要です。

当初は、私が店にいなくても年中無休で店が回せるように、ということが目標でした。

昔からスタッフの人数は少しずつ増えてきました。

ただ以前は、スタッフみんなが何でも一通りできるようにという方針でした。

フィギュアも、マスクも、ポスターも、サイン色紙も、みんなが順番にやる。

でも、この5年でテーマにしてきたのは、スタッフにより専門職になってもらうことです。

ポスターならポスターをやり続ける。
サイン色紙ならサイン色紙をやり続ける。
TシャツならTシャツ。
マスクならマスク。
フィギュアならフィギュア。

一つのカテゴリーを担当してもらい、深く掘ってもらう。

もちろん、少し広げることはあります。
ポスターをやっている人が、その延長で半券チケットも担当するとか。

でも基本的には、同じカテゴリーをずっとやってもらう。

そうすると、スタッフそれぞれがどんどん自立していくんです。

例えばサインの担当者には、まず筆跡鑑定の基本を学んでもらった上で、これまでに入ってきた贋作のパターンも色々勉強してもらう。
その上で、毎日毎日、いろんなサインの実物に触れてもらう。

やればやるほど上達していき、プロフェッショナルになっていきます。
そこには、現場で積み重なった感覚がある。

日々の蓄積を早く積み上げるには、担当範囲を絞った方がいい。

数年やるだけで、かなり深くなります。

ターザン山本:
個性とオリジナリティの分業化ですよ。

野球で言えば、カーブだけでワンポイント、打者一人だけ投げれば評価されることがある。

全部できるんじゃなくて、ここだけはすごい、という形の方が評価される。

個性の専業化、分業化が必要なんです。

泉館長:
そうなんです。

総合格闘技だと覚えることが多いですが、

「あなたはパンチだけのボクシングの練習をやってください」
「あなたは寝技、ブラジリアン柔術を学んでください」
「あなたはレスリング」
「あなたは合気道」
「あなたは柔道」

みたいに、それぞれ主な競技を割り当て、その専門になってもらうような感じです。

その方が、その技術に対しては早く深くなれる。

例えばフィギュア。

プロレスのフィギュアと言っても、フィギュアだけで広いんですよ。

昔の人形もあれば、海外のフィギュアもある。
復刻版もあれば、勝手にカスタムされたものも混じっている。
シリーズも年代も違う。

一つの専門だけでも十分広い。

飽きないどころか、やればやるほど底なし沼です。

フィギュアだけでも、年代、メーカー、国、シリーズによって世界は大きく広がる。専門を深めるほど、ひとつの棚の中にも無数の物語が見えてくる。

プロレスショップという時点で狭まっているように見えて、入ってみると万華鏡みたいに宇宙が広がっている。

その色の追求の仕方には、まだまだ底が見えない。

だけど、どんどんスタッフは自信を持って、各担当が私の知らないことを教えてくれるようになる。

スタッフ10人いたら、10人の脳を掛け合わせた力が店の力になる。

だからスタッフがそれぞれの専門をさらに極めていくことは、これからの闘道館にはすごく大事だと思っています。


25歳になった闘道館

泉館長:
コロナが終わって、システムも変えて、スタッフもそれぞれ専門の仕事を何年かやってきました。

そういう意味で、25歳になった闘道館は、

「よし、ここからだぞ」

という感覚が自分の中ではあります。

ターザン山本:
世界相手ですよ。

泉館長:
世界相手。

ターザン山本:
地球相手にしなきゃ。

国境のないビジネス。
どこにでもつながる。

もう距離がないんですよ。
時間も短い。

それをいかに差別化するか。
差別化ですよ。

もう闘道館にライバルはいないんですよ。
世界相手にするんですよ。

泉館長:
うーん、ライバルは最初からいないんです。

需要があるところに絞って、パイを奪い合うような感じではなく、こういう店があったら楽しいなというところから始めたので。

そもそもなかったものをやっているという感覚です。

もちろん部分的には他店さんと少しかぶるところはあるかもしれませんが、トータルで同じコンセプトでやっているなあと感じたお店は、まだ見たことがないです。

昔イメージしていたことが、今は本当にリアルになっている。

国境のないビジネス。
どこにでもつながる。

だからこそ、闘道館らしさをどう出して伝えていけるかが大事なんだと思います


闘道館は、記憶に電話をかける場所かもしれない

ターザン山本:
僕ね、テレビで見たんだけど、東北の震災で家族を亡くした人のために、電話ボックスを作った人がいるんですよ。

亡くなった人に電話する電話ボックス。

そこに入って、亡くなった人に話しかける。

それがアメリカにも広がったというんですよ。

喪失感って、どうしようもないじゃないですか。

でも、その電話ボックスに入って、

「今どうしてるの?」

と話すことで、喪失感が癒される。

それをNHKで見て、僕はえらい感動したんです。

これだったら、アントニオ猪木に電話するみたいなこともできる。

「猪木さん、今どうしてるんですか?」

小鉄さんに、

「小鉄さん、何してるんですか?」

って電話する。

これ、小説にもなるなと思ったんですよ。

泉館長:
面白いですね。

その空間に入るから、亡くなった人に気持ちが向かう。
話そうと思う環境に入るから、集中できる。

少しずれるかもしれないけど、カトリックの懺悔室のような感じにも近いのかもしれませんね。

ターザン山本:
これからはアイデアですよ。

ビジネスもアイデア。
生き方もアイデア。

何でもかんでもアイデアなんです。

泉館長:
常にアイデアですね。

そのアイデアを引き出すコツってあるんですか?

ターザン山本:
人と会う。
雑談をする。
好奇心を常に持つ。

何か見てやろう、やってやろうという感覚を継続させる。

常に何かを探している感覚。
観察している感覚。

多くのアイデアは、雑談している時に来るんですよ。

泉館長:
まさにターザン山本流の感性の使い方、引き出し方ですね。

先生の話、また一揆塾みたいに、今改めてやってもらいたいです。

考えてみると、闘道館もそういう場所かもしれません。

商品を買いに来る場所でありながら、自分の記憶と向き合い会話する場所でもある。

レスラーの記憶、亡くなった人への思い、自分が夢中だった時代。

そういうものに、もう一度電話をかけるような場所。

猪木展でもそうでしたけど、モノを見て涙する人がいる。

その人はガウンだけを見ているのではなくて、自分の過去や家族との記憶を見ている。

闘道館も、そういう記憶にアクセスする場所であり続けたいですね。

店内に並ぶサインや資料は、それぞれの記憶を呼び起こす入口でもある。
※ご自身の手形サインを見つめるザ・グレート・カブキさん

50代という転機

泉館長:
この5年を振り返って、豊嶋さんから始まり、海外、猪木展で日本を回って、鑑定団、そしてスタッフとともに再構築した店のこと。

話そうと思ったことは、だいたい話せました。

50歳というのも、自分の中ではひと区切りではあります。
ただ、まだ本当の意味で一区切りをつけるのは、もう少し先だと思っています。

ターザン山本:
人間ね、50代というのは転機なんですよ。

フィフティ・クライシス。

50代には大きな危機が来る。
でも危機というのは、何かをするためのきっかけなんですよ。

変わりなさいよ、と。

ただ館長の場合は、経営しているからね。

積み重ねの中で継続的にやっている。
ここを維持しなきゃいけない。
発展させなきゃいけない。
継続しなければいけない。

こういう空間を作ったんだから、ずっと維持しなきゃダメですよ。

泉館長:
それは5年前にも言いましたけど、役割があれば、ということだと思うんです。

世の中が変わって、お店の役割がなくなるなら、違う形でいい。
役割がないのにしがみついて続ける必要はないと思っています。

でも、役割が形を変えればよりあるのなら、形を変えていけばいい。

世の中がどんどん変わり続けるのに、今の闘道館をそのままずっと同じ形で続けていくだけでは、面白くない。

流れを見ながら、感じながら、先生の感性の使い方を勉強させてもらいながら、これからも向かっていきたいと思っています。


プロレスは文化であり、歴史である

ターザン山本:
プロレスを一つの世界に向かって、文化として定着させなきゃいけないという使命感はあるよね。

エンタメなんだけども、時代を反映した文化であり、歴史である。

それをより強くアピールし、定着させて、広げなきゃいけない。

泉館長:
それは本当に刺激的な視点です。

闘うことは、生きることと同義だと思うんです。

人間は、どれだけ科学が発達しても、宗教や哲学を必要としてきました。
なぜ生きるのか。
どう生きるのか。
何を信じるのか。
何と闘うのか。

そういう問いは、どれだけ時代が進んでも消えない。

プロレスや格闘技には、その問いがむき出しの形で出ていると思うんです。

プロレスラーは、闘いという表現の中で、喜怒哀楽を見せる。
怒り、悲しみ、屈辱、意地、誇り、執念、覚悟。
そういう感情を、リングの上で身体ごと表現する。

パンフレットは、闘いの記録であり、その時代の空気を閉じ込めた記憶でもある。

格闘家が見せる強さも、ただ肉体が強いということだけではないと思います。

その人が何を信じ、どう鍛え、どんな哲学で闘っているのか。

極端に言えば、強さというのは、その人の哲学の正しさが試される場でもある。

仏教が曼荼羅で、清濁あわせ持つ宇宙全体を表現しようとしたように、リングにもいろいろな人間が立っています。

正統派もいれば、悪役もいる。
天才もいれば、不器用な人もいる。
強い人、弱さを抱えた人、華のある人、泥臭い人。

それぞれのファイターが、闘いを通して自分の人生を見せている。

そしてそれは、相手がいないと成立しない。

結局、社会を生きるということは、ほぼほぼ対人関係の問題だったりする。
相手とどうコミュニケートし合うか。
プロレスと格闘技は、その攻防によってドラマが生まれる。

観客はそれを理屈ではなく、本能で感じ取って熱狂する。

これは他のジャンルにはない、ものすごい力だと思うんです。

もちろん、プロレスや格闘技を野蛮だと言う人もいます。
人が殴り合い、血を流して、痛みが伝わることに拒否感を持つ人もいる。

でも私は、その世界にこそ、人間の本質に直結する崇高さがあると思っています。

生きることは、きれいごとだけではない。
勝つこともあれば、負けることもある。
誇りもあれば、屈辱もある。
希望もあれば、絶望もある。

それでも立ち上がる。

その姿を、これほど直接的に見せてくれる文化は、ほかにそう多くありません。

だから、もし文化というものが、時代を超えて人間の営みをつなげていくものだとするなら、格闘文化ははっきり言って、究極の文化の一つだと思います。

芸術、スポーツ、伝統芸能、それぞれに素晴らしさがあります。
でも、命や生きることの表現という点において、プロレスや格闘技は非常に卓越した文化だと言える。

やる側も、見る側も、もっともっと誇りを持っていい。

プロレス&格闘技こそ地上最強の文化である!

闘道館が扱っているのは、その文化の記憶です。

マスクも、ガウンも、ベルトも、パンフレットも、ポスターも、雑誌も、フィギュアも、ただのモノではありません。

そこには、誰かが闘った時間がある。
誰かが熱狂した記憶がある。
誰かが生きる力をもらった瞬間がある。

大仁田厚が長州力にしたためた嘆願書の現物。現在、闘道館館内にて展示販売中。長州の「またぐなよ!」とともにプロレス史に刻まれた名場面。その時代の熱を、紙一枚が今に伝えている。


それを次の時代につないでいくことが、闘道館の役割なのかなと思っています。

お客さんは、そこをそれぞれの感性でちゃんとキャッチしてくれていると思います。

ただ、より広く、気づいてくれる人を増やしたいという思いはあります。

ターザン山本:
プロレスは無限の可能性があるからね。

常に生き返ってくる。
生まれ変わっていく。

絶望的になる必要はまったくない。

必ず何か起こるから。
今までも何か起きたからね。

なんだかんだ、生き返ってくるんだよ。

泉館長:
そうですよね。

力道山の時代から、もう終わったかなと思っても、また続いてきた。

時代は続きますよね。

ターザン山本:
捨てたもんじゃないですよ。

「時代を超えて、残すモノがある」。プロレス・格闘技の“宝”を次の世代へ受け継ぐこと。
※入口近くの新看板

最後に

泉館長:
今回、20周年対談の続編として、25周年対談をさせていただきました。

この5年も、濃かったです。

でも、まだ完成ではありません。

ここからが本当の勝負なのかもしれない。

モノを売るだけではなく、記憶をつなぐ。

お客さん、スタッフ、レスラー、研究家、海外のファン、いろんな人とつながりながら、プロレスと格闘技の文化を次につないでいく。

それが闘道館という場所の役割なのかなと思っています。

これからも、形を変えながら、役割がある限り、闘道館を続けていきたいと思います。

ターザン山本:
今日は全部喋ったね。

泉館長:
そうですね。
はい、言いたいことを詰め込んで喋りました。

ありがとうございました。

ターザン山本:
館長、今日はありがとうね。

泉館長:
ありがとうございました!


闘道館25周年記念対談

泉館長 × ターザン山本

完結

<第6話 鑑定団鑑定士

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